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アルアイン陣営の奮闘を振り返る 香港遠征取材後記

2018年05月02日(水) 12:00

クイーンエリザベス2世Cのレース前に馬場入りするアルアイン=4月29日、香港シャティン競馬場

 4月29日に香港のシャティン競馬場で行われた「チャンピオンズデー」を現地で取材した。日本からは3頭が参戦。結果はチェアマンズスプリントプライズに出走したファインニードルが4着、クイーンエリザベス2世Cのアルアインが5着、ダンビュライトは7着に終わった。

 ここではクイーンエリザベス2世Cに出走したアルアインについて触れたい。レースは地元の大将格で昨年の香港Cを制したタイムワープが逃げて、ダンビュライトは2番手を確保。その2頭を見ながら追走したのが昨年の皐月賞アルアインだ。結果は先行馬が総崩れで、鋭い決め手を発揮したパキスタンスターがVをつかんだ。

 池江師は「道中のポジションは作戦通りだった。ただ、結果的に先行馬が総崩れになっているので…。オプションとして速ければ中団でもというプランをしっかりC・デムーロに伝えておけばよかった。ジョッキーには申し訳ないことをしたし、少し見通しが甘かった」とレース後、反省の弁を述べた。

 作戦は間違っていなかったと思う。当日のシャティン競馬場の芝は完全に前有利で差し、追い込みはほとんど決まっていなかった。小頭数だったとはいえ、勝つための位置としては理想的。ただ、レースは生き物で、結果がともなわなかっただけである。

 今回の香港遠征はアルアインと池江厩舎にとって大きな試練となった。それは追い切り日に起きた出来事。シャティン競馬の芝コースで追い切りを行おうとしたところ、駄々をこねて、スタート地点から動こうとしない。鞍上を変えたりと試行錯誤した上、最終的には芝の直線を逆走する形をとり、その内容を2本消化することで追い切りとした。

 異国の地で発生したアクシデント。普段なら数分で終わる追い切りに多くの時間を費やした。記者は現地で取材していて、追い切りは翌日以降に持ち越しなるだろうと思っていた。しかし、師は諦めずに冷静なジャッジを下した。

 アルアインの姿に、「このようなことになったのは初めて」とした上で、「本当に頭のいい馬。きょうはきついケイコをすることが分かってしまったようだ」と分析。栗東での集団調教と違い、海外での不慣れな環境だったことに加え、この日は香港遠征中の調教パートナーだった音瀬助手ではなく、日本でも追い切りに騎乗している岩崎助手が騎乗した。「メジロマックイーンがそうだった。武豊が近づいてきただけで敏感に反応したからね。当時、所属厩舎の服をいつも着ていたし、それを見て追い切りだと分かるのだろうね。それと同じだと思う」と説明。アルアインは岩崎助手の姿を確認して追い切りを察知したと推測し、鞍上を音瀬助手に変更した。これは助手時代の経験則からなるものだ。

 直線を逆走させたことについては、「馬は賢いので、自分の厩舎に帰りたいという気持ちが働く。それで厩舎のある方向へ走らせた」と語る。シャティン競馬の検疫厩舎は4角の奥にあり、そこへ向かって走るということは直線を逆走することになる。ただ、限られた時間の中でこのようなプランは思い浮かばない。「これはイギリス留学の経験からピンときた」と振り返った。

 追い切りを翌日の延ばしてもできる保証はなく、何より調整過程に狂いが生じる。師は「反省しております。オルフェーヴルのような破天荒さとは違う。アルアインは頭が良過ぎる。それで安心していたところはあった。これからはどんな状況になってもしっかりとしたパフォーマンスができるようにしたい」と一連の出来事について語る。

 当然、スムーズな追い切りを行うことがベストではあった。ただ、結果として負荷をかける調教はできたし、何より追い切りができないという最悪の事態は回避した。個人的にはあの状況下では最善の策だったと思っている。

 アルアインはこの香港遠征で勝利を手にすることはできなかった。ただ、今回の経験は今後の池江厩舎の海外遠征で大きな糧になるだろう。師は「日本馬のレベルの高さを世界のホースマンに認知してもらいたい」と何度も口にしていた。思い通りにならない異国の地でも柔軟に対応する池江師の姿勢を見て、そうなる日は遠くないと感じた次第である。(デイリースポーツ・小林正明)

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